腰の疾患
腰椎椎間板ヘルニア
スポーツに限らず一般に発生頻度は高く、スポーツ障害としてもすべての競技種目で起こり得る疾患です。腰への負荷によって椎間板の外側(線維輪)が傷つき、椎間板の中身であるゼリー状の髄核(ずいかく)が、後ろや横に飛び出してしまう病態で、突出した部分(ヘルニア)が神経を圧迫し、腰やでん部、下肢にしびれや痛みが起こります。幅広い世代で発症し、その要因には、腰に過度な負担がかかる重労働や激しいスポーツ活動が挙げられますが、加齢による椎間板の脆弱化、遺伝的要素、喫煙との関連性も指摘されています。
疼痛の強い急性期はスポーツ活動を休止し安静を心がけます。コルセットの装着、消炎鎮痛剤や疼痛治療剤の服用、神経ブロック(炎症を抑える薬剤の注射)などで痛みを緩和します。これらの保存的治療を2~3カ月行っても症状が改善しない場合や、痛みをすぐに取り除きたい場合には手術が検討されます。手術では、椎間板から飛び出して、神経を圧迫している髄核を取り除きます。近年では、MED(内視鏡下椎間板摘出術)やPED(経皮的内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術)といった内視鏡による低侵襲手術も広く行われるようになっています。
腰椎分離症
痛みは、腰のあたりに出現する場合と、お尻や太ももに出現する場合があります。腰を後ろにそらすと痛みが強くなるのが特徴です。多くは10代の発育期に、野球、サッカー、ボート、クラシックバレエなどで腰椎の伸展、回旋を繰り返す運動により、椎弓(椎骨の後方部分)の一部に亀裂が入って起こります。10代で発症し、それが原因となってのちに「分離すべり症」に進行していく場合もあります。
骨癒合しやすい初期の分離症は、レントゲンでの診断が困難で、MRIやCTによる検査が必要になります。これらの検査所見から分離部位の骨癒合のしやすさを判断します。
骨癒合が得られる可能性が高い場合は2~6カ月程度コルセットを装着し、スポーツを休止します。その間、再発防止のためハムストリングなどのストレッチングを行います。骨癒合の可能性が低い場合は、痛みが落ち着くまで、一時的にスポーツを休止し、リハビリテーションを行います。必要に応じて消炎鎮痛剤を内服し、痛みが落ち着けばトレーニングを開始します。
成長期の腰椎分離症は早期の診断・治療が非常に大切です。頻度が高いため、スポーツを行っているお子さんで腰痛が続く場合は、早期の受診をおすすめします。
腰痛症
腰痛は一般に多くの方が経験される症状ですが、スポーツ選手は活動中に同じような動作の反復ストレスが腰椎周囲に加わるため、腰痛の発生頻度は高いといわれています。急性期には一時的なスポーツ休止、消炎鎮痛剤の内服を行い、その後、全身のバランス調整や疼痛の再発を防止するためのトレーニングをリハビリで行いながら、スポーツ復帰を目指します。まれに感染や腫瘍が原因のこともありますので、安静にしていても痛みが軽くならない、あるいは悪化する、発熱がある、しびれて力が入らない、といった症状を伴う場合は、放置せずに整形外科を受診してください。
変形性腰椎症
変形性腰椎症は、加齢や長期間の負担により腰椎の椎間板や関節が変性し、「慢性的な腰痛」や動作時の痛みを引き起こす疾患です。長時間の立位や座位、起き上がりや動き始めの際に痛みが出やすいのが特徴です。進行すると骨の変形により神経が圧迫され、下肢のしびれを伴うこともあります。
生活習慣や姿勢の影響も大きく、筋力低下や柔軟性の低下が症状を悪化させる要因となります。治療は体幹筋の強化を目的とした運動療法やストレッチ、消炎鎮痛薬などの保存療法が中心です。日常生活での姿勢改善や適度な運動習慣が、症状の改善と再発予防に重要です。
ぎっくり腰(急性腰痛症)
ぎっくり腰は、急に発症する強い腰の痛みを特徴とする疾患で、「急性腰痛症」とも呼ばれます。重い物を持ち上げたときや体をひねった動作、くしゃみなどがきっかけとなることが多く、筋肉や靱帯の損傷が原因と考えられています。発症直後は動くことが困難になるほどの強い痛みを伴うこともありますが、多くは数日から数週間で改善します。
治療は無理のない範囲での安静、消炎鎮痛薬、コルセットの使用などが中心です。過度な安静は回復を遅らせることもあるため、痛みが軽減してきたら徐々に日常動作を再開することが重要です。
坐骨神経痛
坐骨神経痛は疾患名ではなく、「お尻から太もも、ふくらはぎ、足先にかけての痛みやしびれ」といった症状の総称です。原因として最も多いのは腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症で、神経が圧迫されることで症状が出現します。
痛みは電気が走るような鋭いものから、ジンジンとしたしびれまでさまざまで、長時間の座位や歩行で悪化することがあります。治療は原因疾患に応じて行われ、薬物療法やリハビリテーション、注射治療などが用いられます。症状が長引く場合には、専門的な評価と治療が重要です。
脊椎圧迫骨折
脊椎圧迫骨折は、主に骨粗鬆症を背景に高齢者に多く発生する骨折で、軽微な転倒や尻もちでも起こることがあります。突然の背中や腰の強い痛みが特徴で、体を動かすと痛みが増強します。適切な治療を行わずに放置すると、背中が丸くなる(円背)などの変形や慢性的な痛みの原因となることがあります。治療はコルセットによる固定や安静、痛みのコントロールを行いながら、骨粗鬆症の治療を並行して行うことが重要です。再発予防のための継続的な治療と生活指導も欠かせません。